ランとの生活
(娘の手記から)

ランがやってきたのは、1985年の9月。私が小学校3年の時でした。

いつから「犬を飼いたい」と思い始めたかは分からないけど、
まず5歳の弟を味方につけ
ずっと親にお願いしていました。幾つかの約束事をして、
やっと犬を飼う許しが出ました。
小3の私は「この犬種が欲しい」なんて考えはもちろん無く
(と言うより、知らなかっただけ・・・)
ただ、犬!犬が欲しいという気持ちでした。

ペットショップで手に入れる方法もありますが、親の中では何万も出して
犬を買うということは
イヤだったらしく、どこから聞いたのか近くの保健所で
里親探しをしてるから、
そこで探そうということになったんです。

子犬が来る前から、名前は「ジョン」と決めていました。

いよいよ土曜日の里親探しの日、昼まで学校がある私を抜いて
父、母、弟の3人で朝から探しに行ってもらいました。
条件は、足がしっかりしていて、しっぽの付け根が太い、
そして雄。と単純なもの。
この条件を親にお願いし、学校に行きました。
「帰る頃には、家に犬が来ている!」
急いで下校し、ドキドキしながら玄関に入るなり「犬は!?」と大声で聞くと、
「おるよ」
その声は風呂場からでした。

見るとそこには、洗われたばかりで、想像していたよりちょっとデカイ
真っ白の子犬が!!
待ちに待った子犬と初めて会った瞬間!!
かわいい〜! 思いっきりはしゃいで、落ち着いた時。撫でながら、
私がお願いした条件を確認していきました。
足は?うん、しっかりしている! しっぽは?おお、太い!
 最後は、雄?あれ?雌やん!
そう、その子は雌だったのです。

親はこの子に一目惚れしたらしく最後の条件は無視されていました・・・。
実は、絶対に雄!という訳でもなく、何となく思っていただけ。
だから本当はどっちでも良かったの。
ただね、おかげで前から考えていた「ジョン」という名前は
一瞬で消えちゃって、どうしよう?
そこで即席で決めたのが、その頃放送していた犬のドラマからとった「ラン」
今から思えば、雌で、そしてあなたで良かった!

ランはフカフカで、めちゃくちゃ可愛い顔をした、スピッツとのMIX。
すぐに父の横にぴったり寄り添って、初めての我が家を不安そうに
見回していました。
一家の主がすぐに分かっていたのね。しかも、おとなしい。
「この子は賢いなぁ」と思わせたのは最初だけ・・・
留守番中に、ゴミ箱の物は全部出すし、ティッシュは箱から一枚ずつ出して
リビングはティッシュだらけ。
どうやってるんやろ?って不思議なぐらい。
一番ビックリしたのが、廊下の壁に大きな穴を開けていた事。
あんたは、脱獄者か!!
イタズラした後の、申し訳なさそうな顔がまたかわいい。
この頃は、一番に家に帰るのが怖かったわぁ。
だって、第一発見者が後片付けの犠牲になるもん。
次から次と色んなイタズラしてくれたよねぇ。

何にも大きな病気もなく、スクスクと育ち
成犬の頃の体重はちょっと太めの17sぐらい・・・

何回か、遠出もしたね!
ランと一緒に初めてのキャンプ。私も弟も小学校の頃やったね!
ランにとっては、海も川も初めて。
すごく怖がって、入ろうとしないから、抱っこして連れてくと
必死でしがみつくの。
ちょっと離してやると、犬かきはちゃんと出来て泳げてるのに泳ごうとせず、
すぐ抱っこして!抱っこしてくれ〜!って深いところにいる私に
近寄ってきてたでしょー。
水の中とはいえ、あんた重いし、
こっちは水着やから引っかき傷は出来るは大変。
おまけに、抱っこしてあげたら
「死ぬかと思った〜」ってな感じで鼻息荒いし・・・。
でも、お母さんが溺れる真似した時は、
一番に海に飛び込んで行ったよね!
格好良かったでー。
ただ、何にも出来ないからお母さんの周り1週して帰ってきたけど。(-_-;)
他には初めて見るカニさんに、クンクンしたら鼻挟まれてキャンって。
ビックリしたねぇ。

冬は香住まで旅行。これまた、初めて見る雪に大興奮!!
ピョンコ、ピョンコ跳ねて、真っ白な誰も踏んでない所にいっては、
得意げにおしっこして
帰ってきたら、雪まみれ、びちゃびちゃ・・・。
走りながら雪を食べてたよね?雪の中にいるランは、とっても楽しそうで、
すごく綺麗でした。

海や川より、雪の方が好きだったのね。だって大はしゃぎしてたもんね!

あとは、もの凄い早さで走っている姿。
散歩に行って、たまにリードを外してやると、雌とは思えない程、
とっても格好いい姿です。

どんなに遅くても帰ってくると、玄関に「お帰り〜」って迎えに来てくれて!(^^)!
お父さんが酔っぱらって帰ってきても、
ランだけはちゃんと出迎えて酔っぱらいの相手してたよね。
あの時のランは、凄いなぁって尊敬します。

お父さんを見る時の眼。他の家族を見る眼と全然違う眼差し・・・。
羨ましかったな〜。
人見知りの激しいランは、滅多に人にもワンちゃんにも懐かず、
喜んで寄って行くのは家族とラン自身が選んだ
(何を基準にしてるのか分かんないけど・・・)
ごく一部の人だけ。それ以外の人には(特に子供)
「それ以上、私に近づくなよぉ!」と
何とも言えない独特の横目。
一応「コラ!!」って怒ってたけど、ねーちゃんは意外と好きでした!あの眼。

特に、家族の者には何をされても絶対怒らなかったね。噛まなかったね。
それを分かってるから、余計にチョッカイ出したりして・・・(^^♪

この16年間、何にも病気しないのが当たり前の様に過ごしてきました。
おばあちゃんやから、歩くのはトボトボやったけど。

けど、ある日から少しずつ元気がなくなってきたの。
『老い』が確実に近づいていることに気づきたくなかった