老犬の介護を体験して 


それまで考えもしなかった 愛犬の老いていく姿
わたしにとったら 他人事のように思えた
周りの犬は年をとってだんだんと顔に白いものがあらわれ始める
でも 我が家の犬は真っ白だったので老いていく過程がわからなかった
近所の人に言わせると 『ランちゃん若いねぇ〜』なんていってくれる実際
 顔だけ見てたら年をとっているのかわからなかった

でも 老いていく兆候はランにもあった
まず 寝ている状態から起き上がろうとするときにすっと立ち上がれない
顔がだんだんと傾いてくる
一定の方向に回り始める 粗相をする 今まで吠えたことのない子が
夜になると意味もなく吠え始める
おこっても吠えることはやめません

部屋の中を同じ方向ばかりくるくる回り始めたとき 
目が回らないのかなとも思いました
そして 頭をその辺によくぶっつけ始めた
おまけに細い隙間などに顔を突っ込んだときは
前には進めても後へ戻るなんて事が出来なくなっていた
誰かが助けるまではいつまでも立っていた
だから 我が家にも留守の間どこにぶっつけてもいいように
家具とか目の高さにある物は全部 ぷちぷち(空気の入っている袋)を貼り
当たっても痛くないようにしていた そしてランが入りそうな隙間には物を置
いた
お客さんが家に来た時びっくりしていた
きっと 異様な雰囲気に見えただろうと思う。

一度立てなくなると 次に立ち上がることがとても困難になっていた
自分では立とうして力を入れているのだがつるつるすべって立てないので
ある
そういう状態がしばらく続きとうとう寝たきりになってしまうのである
こうなると トイレがとても難しくなる
自分ではしたいのだが立てないからついついお漏らししてしまう
出てしまったら動かない足をもそもそとぎこちなく動かし知らせるのである
やはり ランにもまだプライドが残っていた
汚れるのが嫌いな子だったから・・・
留守の間は おしめをすることになる これもランにとったら
初めてのことなので最初は嫌がった
でも そのうち観念してしまいおとなしくさせるようになった

顔つきも年をとると小さい時のようにとても可愛くなってくる
目がくりくりとしていて その目で家族の様子を必死に追うのです

ランも寄る年に勝てずどんどんと体力も失い やがて食欲も落ちていった
家族にとってはとても悲しい それでも食べてもらおうと毎日必死で作った
一口でもといいからという思いを込めて・・・
自力で食べなくなると 今度は注射器で食べ物を
口の中に入れてやる流動食になってしまった
それでも食べなくなると 最後の手段として点滴で栄養をとらなくては
いけなくなってくる 週に何回か病院に行き点滴するのである
あの力の抜けた体を抱き上げるのは大変な労力がいるのである
駐車場まで抱いて歩くと腕がおかしくなってくる
でも この子は人間の手を借りなければもう生きてはいけないのだ

いままで 私たちを楽しませてくれたのだから
今度は私たちがランに少しでもお返しをしなければ・・・という思いだった

ランを介護するようになって 判らないことだらけで
ネットで同じような体験をしている人に相談にのってもらったりして
どんなに力づけられたことか 我が家のとこよりもっと
大変なところがいっぱいあった 
1年以上も介護をしている人 そしてその介護グッズを自分たちで考えて
手作りしている人 ランの時も『歩行ベルトがいるのなら差し上げますよ』な
んて
親切に声をかけてくださった方もいました。

とにかく 介護というのは家族が協力していかなければいけないのだと・・・
自分一人ではとてもここまでできなかっただろう

本当に愛らしい子犬の姿、そして元気の盛り、
共に過ごす楽しさ、それに比べて年老いていく過程は時に残酷です。
それをしみじみと体験しました。

動物を飼っている以上みなさんも一度は経験するでしょう
そのときはやはり最後まで尽くしてあげられるようにしたいですね。

動物にとって頼れるのは飼い主だけなのだから・・・


Home